<コラム23> 2015.4
ー「スロー・エンカウンター・グループin沖縄」のことー
高松里
「エンカウンター・グループ」はアメリカで誕生したのですが、当時は色々な試みが行われていたようです。カリフォルニアの「ラ・ホイヤ・プログラム」が有名ですが、これは2週間程度の長期間行われ、コミュニティ・ミーティング、スモール・グループ、インタレスト・グループ、ウィークエンドグループなど、様々な試みが行われていました。また、ダンスやバレーボール、サーフィン、みんなで遊びに出かける、など様々なアクティヴィティがあったようです(安部、1982)。我々が呼ぶいわゆる「セッション」(集中的な話し合い)の時間は、中心的ではありますが、いろいろな試みの一つという感じです。
日本でエンカウンター・グループとして定着したのは、この中の「セッション」の部分で、いかにも勤勉な日本人らしいチョイスだったなあという気がします。そんなにたっぷりとした時間も取れませんし、「ではエッセンスである小グループを中心にしよう」と考えたのはわかる気がします。
しかし、多様な経験に開かれているのが元々のエンカウンター・グループであると考えると、もっと違ったグループの展開が可能になってきます。つまり、3時間のセッションを一日に2~3回繰り返し、しかも主に言葉を使って話し合うだけでは、ちょっとバランスが悪いというか、もったいないという気がしてきます。
というのは、グループが行われる会場は風光明媚な所が選ばれることが多いのですが、実際には外に出る機会はあまりありません。自然に触れたり、みんなで一緒に遊んだりするよりも、部屋に閉じこもって話し合いを続ける、ということはちょっと窮屈だなあと私は感じていました。
「スロー・エンカウンター・グループin沖縄」は、スタッフ(私も含む6名)が大好きな沖縄で、その環境にふさわしいグループを展開できないかと考えた結果生まれたものです。基本原則は、
・空気、風、音、景色、海、林、土地の料理、などに恵まれた会場で行う
・部屋の中での話し合いの時間は、あまり多く取らない
・外に出る機会を増やす。散歩したり泳いだり歌ったりする。おいしいものを食べに行く。車ででかけたい人にはレンタカーをお貸しする
・自然と触れるようなワークをいくつか提供する
・家族(夫婦、親子、小さな子ども)の参加も歓迎する
などです。
現在の会場は、沖縄中部、美ら海水族館のすぐ近くの備瀬というところです。ふくぎ並木というきれいな林の中にある、民宿を貸し切りにしています。毎回のように、小さな子どもも参加していますので、夏休みの田舎の大家族という雰囲気で、思い思いに過ごします。
もちろんエンカウンター・グループですから、お互いの気持ちを伝えたり、その日経験したことを報告したりします。でも、常に外の風が入ってきたりしますので、環境と自分の気持ちの両方に目が向きます。
このように、エンカウンター・グループは、型にはまる必要はないし、自由に展開していくものだと考えています。基本的には、多様で豊かなコミュニケーションチャンネルが、人や自然・環境との間に開かれていくことが、大事なのではないでしょうか。仲間たちと一緒に、自分に合ったグループを模索してみるということは、刺激的で楽しいことです。
<引用文献>
安部恒久 1982 私のラ・ホイア・プログラム参加体験 九州大学心理臨床研究, 1, 97-112.