<コラム25> 2017.4

大学生とベーシック・エンカウンター・グループ

 

 

 

                                          山田俊介

 

 エンカウンター・グループ(とくにベーシック・エンカウンター・グループ:BEG)に参加するようになって、もう少しで40年が経とうとしています。私が初めてBEGに参加したのは、大学2年生の時でした。私が大学生の頃は、キャンパス・エンカウンター・グループがとても盛んでした。多くの大学で、学生相談機関などが主催し、所属する学生を対象とするBEGが行われていました(コラム20で、尾崎さんも述べておられます)。

 私が学ぶ大学でも、秋と春休みに在学生を対象としたBEGが3泊4日で実施され、1グループが10名程度で、3グループに分かれて行われていました。参加する学生も心理学を専攻する学生が大半というような状況ではなく、様々な学部、専攻の学生が参加していました。それぞれのグループでは、多くの場合、真剣で率直な話し合いが展開していました。そこでは、他の学生がどのようなことを考え、悩み、どのような思いを持ちながら大学生活を過ごしているかを感じることができました。また、他の参加者に対する態度、関わり方は、1人1人異なり、独自性を感じるとともに、自分の関わり方を見直すことにもつながりました。そして、互いに真剣に理解し合おうとし、気持ちが通い合う喜びを経験することもありました。

 このように、他者の内面や人生に出会うことができ、自分自身の内面や他者への関わりをじっくりと見つめることのできるBEGは、大学生の私にとって(戸惑いや不安・緊張を経験することもありましたが)、とても新鮮で、刺激的で、魅力的でした。そこで、大学生だけでなく一般の社会人も参加するBEGにも参加するようになりました。また、大学4年生が終わる春休みには、知り合いになったファシリーテーターの方の協力を得て、近隣の他大学の学生にも参加を働きかけて、3泊4日の学生のためのBEGを仲間とともに自ら企画、実施しました。それだけ強く私がBEGに魅かれていたといえるでしょう。自己が形成される青年期にBEGを経験したことは、その後の私の生き方に大きく、深い影響を及ぼしていると感じます。

 近年、キャンパス・エンカウンター・グループはあまり行われていないようです。また、BEGの募集案内を紹介しても、参加する大学生は少なくなっているように感じられます。ただし、私の身近な学生がBEGに参加することも時にはあります。参加した学生に参加後に感想を尋ねると、「普段の大学生活ではできないような話をすることができた」など、ほとんどの場合、満足のいく貴重な経験であったことが語られます。そうした姿に触れると、現在の大学生にとってもBEGは大切な意味を持ち得るのだと感じられ、うれしくなります。現在の大学生の中にも、他者と深く真剣に関わり合いたいと望んでいる学生や、自分の在り方や他者への関わりをじっくりと見つめてみたいと思っている学生は存在することと思われます。そうした学生の方たちが、より多く、BEGの存在を知り、関心を持ってBEGに参加してくれることを願っています。