<コラム7> 2011.8.29
岩村 聡
私(達)は、カウンセラーの「守秘義務」ということばが、あまり好きではありません。守秘義務というと、法律などによって、外側から縛られる印象を受けますし。スクールカウンセラーとして中学校などに行きますと、対外的な守秘義務をいいながら、クライエントの思いなどをカウンセラーから聞き出して、職員間で共有しようとする人達と出会って、とまどわされたりするのですが……。
私達カウンセラーが秘密を守ることが望ましいのは、カウンセリングという特殊な活動をより有効なものにする信頼関係の形成が、最大の目的・理由だと思います。
クライエントは、カウンセラーとの対話を重ねて信頼関係を築く中で、誰にも言えなかった恥ずかしいことも、精神的な病気の原因になったような外傷体験なども、語って傾聴され癒され、その束縛から解放されて、成長できるようになります。クライエントは、そのような対話の内容が、漏れ出して誰かに知られる恐れがあったりすると、話しにくい話は話さなくなるだろうし、そのカウンセリングは、望ましい人格変化への可能性を閉ざすことになる、と思うのです。
だから、相談の秘密保持は、カウンセラーにとって、クライエントの尊厳を守ることを通じて、自分自身の信頼性や援助の価値を高めるために、主体的に選んで行うものだと思います。
私は、エンカウンター・グループ・ファシリテーターの中では、臨床実践家アイデンティティーの強い1人だと感じています。
グループでも、その安全性などに強い関心を持っていますが、個人カウンセリングでは、効果的な問題解決援助や、クライエントの成長発展を目指す継続的で教育的な援助や、そのための信頼関係の形成などに、関心があります。